2015-11-15

虚と実





風もやみ静かな鏡となった水面に映る像の方が、
なぜかひときわくっきりと見えていた。


しみじみと眺めると、大きな違いは、光沢なんだと気づく。


逆光で柔らかい光がまわるホンモノが、写真プリントでいうところのマット仕上げで、
池に映りこむ方が光沢仕上げだった。


両方がタッグを組んだこのできごとは、不思議なことになっている。


並ぶ木々や空は実像で、池に映るそれは虚像だけど、その池は実像で・・・・・・。
なんだか頭がこんがらがってくるけれど、きれいだからいいんだ。


秋の夕暮れに現れた一幅の水墨画は、
遠くで車がアスファルトを擦る音とともに、
体の奥深くへ、ストンと落ちていった。