大量にカットしたイチジクは、
外側からは想像つかないようなあでやかさで、つやつやと光る。
キッチンも指先も、甘い香りで満たされた。
とろりと透き通って、さらに色気を増した。
昔、イチジクで妙に感心した話がある。
20代前半の頃、同い年のとても色っぽい友人がいた。
お酒の席の会話で、
ある男性がその友人のことを、
「すごいね、熟したイチジクみたいだよねー」と評した。
うら若き女性に面と向かって、
ほめているのか、けなしているのか・・・・・・だけれど、
なるほど、妖艶なようすの最上級に思えた。
「もぎたての青りんご」なんかの対極にありそうだ。